初心者でもできる!おすすめの金継ぎの始め方

金継ぎ

初心者が金継ぎを始めるにはどうしたら良いのか、

金継ぎ教室やキット、本など沢山あるなかで、

漆芸歴25年以上、金継ぎ教室を開催している、筆者のおすすめ方法を場面別にご紹介します。

各所から宣伝費などは一切受け取っていない、個人的な好みのおすすめ内容ではありますが、

ぜひ金継ぎを始めるときの参考にしてみてください。

金継ぎの基本的なやり方と工程

大切な器が割れたり欠けたりしても、金継ぎで器を修繕することで永く使えます。

金継ぎの技法は、伝統的な漆を使う方法と、現代の材料を使う簡易金継ぎがありますが、

どちらも基本的なやり方と工程は同じです。

ここでは、伝統的な漆を使う方法を「金継ぎ」と呼び、

現代の材料を使う方法を「簡易金継ぎ」と呼び、

完成までの工程をかなり大まかにご紹介します。

①器の見極め

「見極め」なんていうと難しく聞こえますが、

金継ぎしたい器がどんな状態なのか改めて観察すると、

器への愛情と、

これから直すぞー!という気持ちも一層増す気がします。

特に見たいポイントはこちら。

・どんなふうに割れてる?欠けてる?欠けている場所の深さは何ミリくらい?

・器は陶器?磁器?表面はツルツル?ザラザラ?

見極めたら、器に残った油分を脱脂したり、

必要に応じてマスキングテープなどで養生したり、ということをします。

器を眺めているうちに、

完成のイメージが湧いて来ることもあります。

②割れは接着して、欠けは埋める。

<金継ぎ>

漆(ウルシの木の樹液)で作った接着剤やパテを使います。

<簡易金継ぎ>

エポキシ系の接着剤やパテを使います。

③表面をなめらかにする。

<金継ぎ>

漆を数回塗り重ねて、表面をなめらかにします。

<簡易金継ぎ>

パテの表面をサンドペーパーなどで整えて済ませることが多いです。

④金粉などの金属粉で加飾する。

<金継ぎ>

漆を接着剤にして、金属粉を蒔き、定着させ、さらに磨いて完成します。

<簡易金継ぎ>

漆風の塗料に金属粉を混ぜて塗るか、漆風の塗料を接着剤にして金属粉を蒔いて完成します。

本漆の金継ぎと簡易金継ぎの選び方

それぞれメリットとデメリットはありますが、

まずはどんな金継ぎをしたいのかによって、

選ぶ教室やキット、本が変わります。

本漆の金継ぎがおすすめの場合

昔から食器を作る材料になっている「漆」を使う伝統的な「金継ぎ」が向いているのは、

このような器を修理したい場合です。

・料理を盛り付ける器。

・直接口をつける器。

・器でも置き物などでも大切にしている物で、直すなら伝統的な漆を使う方法でやりたい場合。

完成するまでに時間はかかりますが、漆は安心して食器に使える材料です。

簡易金継ぎがおすすめの場合

エポキシ系の材料をと漆風の塗料を使う「簡易金継ぎ」でできるのはこのような場合です。

・カップの持ち手やソーサー、花器や置き物など、口に直接触れないところや物の修繕。

・時間をかけずに気軽にやってみたい場合。

早ければ1日で完成しますが、食器に使うには安全面で不安が残るのでおすすめしません。

細かく教わりたい!という方はこちら

金継ぎ教室に通う

1回開催の体験型ワークショップではほとんどが「簡易金継ぎ」です。

漆を使う「金継ぎ」をやってみたい場合は、

「ワークショップ」ではなく、ぜひ「教室」で探すことをおすすめします。

各地にある金継ぎ教室では、

講師から対面で、細かく教わりながら進めることができます。

金継ぎ初心者だったとしても、わからないことや不安なことがあった時に、

すぐに質問できることが教室に通うメリットです。

さらに、金継ぎをしている時は黙々と手元の作業に没頭して、とても静かな時間が流れることが多いのですが、

講師や教室に一緒に通う方々との会話が始まることもあります。

講師はそれぞれ、これまで自分が学んだことや失敗も成功も含めた経験があるので、

ひとりひとりの実体験に基づく「金継ぎ話」や「漆話」が聞けたりするかもしれません。

金継ぎ教室の選び方

美術・芸術大学で漆芸を学び、さらに卒業後にも漆教室で学んだり、

漆ワークショップに参加した経験から、

自分に合う教室の選び方をご紹介します。

通いやすい場所

簡易金継ぎの場合は1回で完成する体験クラスも多いですが、

金継ぎの場合は完成までに数回通うことになるので、

アクセスの良さは重要です。

休日に通うなら、自宅からのアクセス。

仕事の帰りに通うなら、勤務先や自宅からのアクセスを必ず確認してください。

例えば

「東京 金継ぎ教室」

のように「エリアまたは地名+金継ぎ教室」で検索すると

アクセスの良い場所にある教室を見つけやすいです。

教室の開催日程

教室には様々な開催スタイルがあり、

このような日程が多いです。

・「⚪︎曜日の⚪︎時コース」のように曜日も時間も固定。

・月ごとに開催日が変わる、不定期開催。

・春開催コース、秋開催コースなど、一つのコースごとに日時が固定。

・決まった開催日程の中で、好きな日に行ける。

日程についても数回は通うことを前提に確認してください。

教室代や道具と材料代

こちらもいくつかの料金体系がありますが、

入会時に入会金と自分の道具と材料費を支払い、

教室代は月額制のところが多いようです。

(筆者が開催している金継ぎ教室では、入会金無しの都度払い制にしています。)

比べるポイントはこのようなところです。

・入会金の有無

・月額会費か都度払いか

・道具や材料費は会費に含まれるか別払いか

教室の雰囲気

金継ぎ教室のイメージはなかなか湧きづらいと思いますが、

基本的には机に向かって各自が黙々と、手元で細かい作業をしています。

「漆教室で金継ぎも教えている」ところと、

「金継ぎを専門に教えている」ところがあって、

どちらも金継ぎを教わるのには良いところです。

もし、教室の雰囲気が自分に合うか不安な場合は、一度見学することをおすすめします。

ちなみに金継ぎをしたい方は器好き(=食べることも好き)な方が多いのかな、と思っています。

また、「この人の金継ぎ作品が好き!」と思える方が金継ぎ教室をされていて、

さらに通いやすい場所にあったら、そこへ行ってみるのもおすすめです。

オンライン金継ぎ教室

対面だけでなくオンラインで金継ぎ教室を開催しているところもあります。

「教わりながらやりたいけど、近くに行ける場所が見つからない」という方は、

オンラインクラスも検討してみてください。

こちらも、検索するといくつか教室や講師を見つけることができます。

(筆者も不定期でオンライン金継ぎ教室を開催しています。)

自分のペースで没頭する作業が好き!自宅でやりたい方はこちら

誰かと一緒ではなく、ひとりで没頭するのが好きな方や、

決まった時間に教室へ通うことが難しいよー、という場合は、

自宅で金継ぎに挑戦することもできます。

金継ぎ初心者でも自宅でできるように、

キットや本もたくさん出ています。

イチから道具を揃えるのは面倒!金継ぎキットの選び方

「金継ぎキット」で検索すると、金継ぎをするために必要な道具と材料がひと通り揃ったセットがたくさん見つかります。

漆を使うキットと簡易金継ぎのキットがあるので、

目的に合わせてどちらにするかを選んでください。

そして、どのキットにも、「金継ぎのやり方」が書いてある説明書が入っていて、

なかにはやり方を説明した動画を見ることができるようになっているものも多いです。

また、漆の金継ぎキットは、内容によって値段が変わっています。

わかりやすいのはキットに入っている「金粉」の量です。

金自体が高価なので、金粉がたくさん入っているキットは金粉が入っていないキットに比べて価格は上がります。

金粉0.1gで小さな欠けは3箇所程度は十分直せると思います。

(ただし、金粉を蒔く直前の漆の厚みと乾き具合によって、必要な金粉の量はかなり変わりますので、あくまでもご参考まで。)

初心者も安心!おすすめの金継ぎキット

漆を使う、個人的におすすめの金継ぎキットはこちらです。

どちらもやり方の説明書と動画がついていて、

初めての方でも本格的な金継ぎを始めることができるキットです。

①金継ぎコフレ

京都にある漆屋さんの堤浅吉商店から出ているキットです。

キットのデザインがおしゃれで、手元にあるだけでも「金継ぎをやるぞー」という気分が盛り上がります。

また、こちらの漆屋さんは漆の魅力を広めるために、

漆を販売するだけでなく漆塗りのサーフボードを作ったり、他にも様々な面白い取り組みをされています。

お近くにお住まいの方はフラッグシップショップの『Und.』(アンド)へぜひ足を運んでみてください。

きっと金継ぎだけにとどまらない、漆の魅力に触れることができると思います。

②金継ぎ小箱

京都にある漆屋さんの鹿田喜造漆店から出しているキットです。

漆の種類が多いのが特徴のキットです。

簡易金継ぎの金継ぎスターターセットもありますが、そちらは漆は使用しません。

また、こちらの漆屋さんでは、ガラス用の漆がお試しサイズの少量から購入できることが嬉しいポイントです。

ガラス用の漆を使うと、初心者でもグラスの金継ぎがやりやすいです。

③[KIJIMATSU] 初心者・中級者向け 本格金継ぎ フルセット

こちらは漆屋さんが出しているキットでは無く、

さらに金粉と銀粉は消粉という一番小さな粒(金・銀の層が薄い)ではあるものの、

色々なキットを見る中で、

必要な材料と道具がとてもシンプルにまとまっていると思う内容です。

購入費用は抑えたいけれど、本漆を使った金継ぎをしたい方におすすめです。

材料や道具選びも楽しみたい!金継ぎ本の選び方

近くにホームセンターや大きな画材屋さんがある場合や、

オンラインショップで商品を探すことが好きな方は、

本を購入してそこに書いてある道具と材料を自分で揃える、という方法もあります。

自分で道具を探して揃えるのは、

宝物集めをしているようなワクワク感を楽しめます。

ここでは金継ぎ初心者でもわかりやすい、

漆を使った金継ぎ方法について解説しているおすすめの本と、

金継ぎに慣れてきた方にもおすすめの本をご紹介します。

①おうちでできるおおらか金継ぎ

著者は漆芸家であり、漫画家でもある堀道広さんです。

堀さんのイラストでの説明がとてもわかりやすいので、

初心者の方にとっては聞き慣れない言葉がたくさん出てくる金継ぎ工程も

読みやすいかもしれません。

さらに「おおらか」ではあるものの、書いてある内容はしっかり本格的な金継ぎ方法なので

これから金継ぎを始めたい方だけでなく、

金継ぎがどんなものなのか知りたい方の読み物としてもおすすめの本です。

②はじめての金継ぎ

監修は日頃から金継ぎを教えている、坂田太郎さんと中島靖高さん。

撮影協力は東京にある漆屋さんの播与漆工芸教室(株式会社播与漆行)です。

この本は表紙にある通り、

金継ぎをしていて困った時や、失敗してしまった時の解決方法をわかりやすく解説しているのが特徴です。

筆やヘラなど道具の扱い方も写真付きで丁寧に解説してあるので、

金継ぎ初心者でもしっかりと学んでみたいという方におすすめの本です。

③金継ぎの技法書

著者は長く金継ぎ講師をされている工藤かおるさん。

この本は金継ぎの基本から応用編まで、

綺麗な写真とともに詳しく紹介されています。

伝統的でとても丁寧な金継ぎ方法が書かれているので、

もしかしたら初心者の方が金継ぎを始める前にいきなり読むと「金継ぎって難しそう」に感じてしまうかもしれませんが、

金継ぎを始めたばかりの方や、いくつか金継ぎをしてみた方は、読んでみるととても面白い内容です。

今まで上手くいかなかったことが、この本の説明で解決できたり、

次の金継ぎのアイディアが湧いてきたり、ワクワクする内容になっています。

金継ぎ初心者の方から、金継ぎを始めている方へもおすすめの本です。

まとめ

金継ぎは初心者でも楽しむことができる、器の修理方法です。

割れた器、欠けた器が自分の手で修繕されていく様子はとても楽しく、

これまでにない達成感を味わうこともできますので、

ぜひ金継ぎに挑戦してみてください。