金だけじゃない !いろいろな種類の金継ぎの仕上げ方法

金継ぎ

「金継ぎ」と聞いて思い浮かべるのは

器に金のラインが引かれたものだと思いますが

実は、金以外の色で仕上げることができます!

器の雰囲気によって仕上げ方法を変える楽しみが加わると、

きっと金継ぎがさらに楽しくなると思います。

ここでは様々な仕上げ方法の種類についてご紹介します。

金継ぎの基本手順

金継ぎの基本的な手順はこちら。

①器の形を整える工程

割れた器を接着する。割れた器の凹みを埋める。

②接着や埋めた箇所の表面を綺麗に整える工程

それぞれの修理箇所に漆を何回か塗り重ね、表面を滑らかに整える。

③金粉などで表面を装飾する

漆を接着剤として、修理箇所に金粉などを接着して(蒔いて)装飾する。

「金継ぎ」は③の工程まで済ませたものですが、

「器を使う」という強度だけで言うと、

②までの「漆を何回か塗った状態」でも問題ありません。

筆者の開催している金継ぎ教室では、

日常使いの器は②までの工程で完成とする方も多くいらっしゃいます。

このように、「金継ぎ」とは言っても、

器を修理する方法は、大きく分けて

金属粉で仕上げる方法

漆の表情で仕上げる方法

の2種類があります。

それでは次に、それぞれの種類と魅力についてさらに詳しくご紹介します。

金属粉で仕上げる方法

まずは、金継ぎといえばこれ!

の、器にきらりと光るラインが美しい、

金属粉で仕上げる種類についてご紹介します。

主に使われる金属粉の種類

金属粉にはいろいろな種類の素材があり、仕上げたい色味によって使い分けたりします。

主に使われるのはこちらの素材です。

・金粉

・銀粉

・錫粉

・真鍮粉

・プラチナ粉

この中で一番多く使われているのはおそらく「金粉」です。

ちなみに、使う金属粉に合わせて

「金継ぎ」「銀継ぎ」なんていう表現もしますが、

「真鍮継ぎ」とか「錫継ぎ」という表現はあまり聞いたことが無いです。

また、金粉が高価なため、代わりに真鍮粉が使われることがあります。

金属粉の粒の大きさはいろいろある

金属粉の粒の大きさもいろいろあり、

大きさによってこのような違いがあります。

・粒が大きい→金属の膜が厚くなるためはげにくい。同じグラム数では蒔ける広さは狭くなる。

・粒が小さい→金属の膜が薄くなるためはげやすい。同じグラム数では蒔ける広さは広くなる。

※金属粉を接着することを「蒔く」と言います。

(例)「今日は金粉を蒔きます!」

そして、金継ぎでよく使われる粒の大きさは、おそらくこの3種類です。

「消粉(けしふん)」=金属粉の中で一番小さな大きさ。とても広く蒔けるけれど、金の厚みは薄い。

「丸粉(まるふん)1号」=丸い形の粒の中で、一番小さな大きさの粒。とはいえ、消粉より金の層は厚くできる。広く蒔ける。

「丸粉(まるふん)3号」=丸い形の粒の中で、三番目に小さな大きさの粒。大きすぎず小さすぎず、若干はげにくい厚みで比較的広く蒔ける。粒が大きくなる分、ピカッと磨き上げるにはある程度の工程とテクニックが必要。

消粉と丸粉は粒の形が違います。

そして丸粉には大きさが様々あり、

筆者が購入している金粉屋さんでは1~15号までのサイズがあります。

漆の表情で仕上げる方法

金属粉で装飾をせずに、漆だけで仕上げる場合もあります。

その時は「漆継ぎ」「共継ぎ」と呼んだりします。

器の雰囲気によっては、漆で仕上げる方がしっくりくることもあります。

金属粉で仕上げる魅力

それぞれの金属粉は仕上がりの色味が違います。

器の雰囲気に合わせて、使う金属粉を変えることも楽しいです。

金粉

「金継ぎ」といえば金!

きらりと華やかな雰囲気にも、しっとり落ち着いた雰囲気にも、

様々な表情に仕上げることができるように思います。

時間が経っても色味が変わらないのも魅力です。

銀粉

磨き立ての時はピカッとした輝きですが、

時間の経過とともに、色が黒っぽく変化します。

(毎日のように使う器の場合はそこまで変化しないかもしれませんが・・・)

色味が変わることを想定して、

時間が経ったあとのこともイメージして装飾に使うと、

器全体がさらに侘び寂びを感じられるような雰囲気になるかもしれません。

プラチナ粉

銀よりも硬質な輝きです。

時間が経っても色味は変わりません。

陶器や磁器に対して「金属」という質感の差がはっきり出やすいので、

装飾部分を際立たせたい時にはより向いているかもしれません。

錫(すず)粉

錫製の器は銀に近い色味ですが、

漆芸で使う錫粉はもう少し黄色味が強い、金よりは渋みのある落ち着いた色味です。

また、錫粉は他の金属粉よりも粒が大きい(粒の大きさの種類も少ない)ため、

ピカっとした強い輝きというよりは、

柔らかい輝きにになります。

土のざらっとした質感が強い陶器に使うと、

器の雰囲気とよく合い、しっとりと落ち着いた雰囲気に仕上がるように感じます。

逆に、土のざらっとした質感と装飾部分の差をつけたい時は、

避けた方が良い素材かもしれません。

真鍮(しんちゅう)粉

金の代用として使われることの多い素材です。

色味や輝き方は金に似ていますが、

並べてみると違いがわかります。

また、日常使いではない器の場合は、

時間の経過とともに色が黒ずんでくることがあるかもしれません。

漆だけで仕上げる魅力

修理した箇所は必ず金属粉で装飾しなければならない、ということはありません。

漆の表情のまま仕上げることも可能です。

漆継ぎ

器の持つ雰囲気に合わせて、漆の黒や朱、その他の色漆で仕上げます。

絵付けのされた器にはこの方法もおすすめです。

例えば、

イタリアのマヨリカ焼きのようなカラフルな絵付けがされた器を

絵付けの色と同じような色の漆で修理すると、修理した箇所も絵の一部のようになって、

とてもバランス良く仕上がります。

また、金属粉を蒔いて磨く工程が無くなるため、

完成までの時間が短くできることもメリットです。

もともとの漆の色は茶色ですが、

顔料を混ぜてピンクや黄色、緑色など様々な色の漆を作ることが可能です。

~補足情報~

どんな色の顔料を使っても、漆の色の茶色が影響するため、

白はベージュ(頑張っても生成り)、

レモンイエローは山吹色、

と、茶色がかった色味に仕上がります。

共継ぎ

修理した箇所を器と同じ色の漆で塗り、

直した箇所がわかりにくくなるように仕上げる方法です。

漆に顔料を混ぜると様々な色を作ることができるため、

器に合わせて色味を調整します。

また、漆は乾く前と後では色味が少し違うため、

いきなり塗らずに、割り箸などの端に塗って、

乾いた時の色味を確認してから器に塗ります。

まとめ

器の持つ雰囲気に合わせて、

どんな仕上げにするかイメージすることも金継ぎの楽しさのひとつです。

金属のキラリとした輝きで仕上げるもよし、

漆の色で、元の絵とリンクしたデザインで仕上げるもよし。

器を直しながらイメージを膨らませて

ぜひご自身の感覚にぴったり合う方法で仕上げてください。